デュークラバシチニブ(製剤名:ソーティクツ)が乾癬治療の新たな経口薬として承認(2022年8月追記)Deucravacitinib(Sotyktu), new oral medicine for psoriasis

新たな内服薬、デュークラバシチニブ(製剤名:ソーティクツ)が、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の治療薬として承認されました。
今後2,3か月程度の期間を経て、厚生労働省の薬価基準に収載されたあと、一般患者さんへの使用が開始されます。
TYK2に結合しその活性化を防ぐことで、IL-12、IL-23からの炎症反応促進のシグナル伝達を阻害します。
新しい乾癬の内服薬、デュークラバシチニブ(Deucravacitinib、製剤名:ソーティクツ(Sotyktu))
一般名:デュークラバシチニブ(Deucravacitinib、製剤名:ソーティクツ)という新しい薬が、2022年8月に厚生労働省より承認されました。
本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症で適応疾患となります。
乾癬治療に適応されている JAKファミリーのタンパク質に対する阻害剤としては、ウパダシチニブに次いで二つめとなります。現在、ウパダシチニブは、関節症性乾癬に対して使用可能です。
また、TYK2に対する阻害剤としては初となります。
メーカーページ(英文)
https://news.bms.com/news/details/2021/Bristol-Myers-Squibb-Presents-Positive-Data-from-Two-Pivotal-Phase-3-Psoriasis-Studies-Demonstrating-Superiority-of-Deucravacitinib-Compared-to-Placebo-and-Otezla-apremilast/default.aspx
薬の添付文書は発行されていませんので、本記事はこれまでの一般的な知見と、参考論文を合わせての情報となります。
デュークラバシチニブの治療メカニズム(作用機序)
前提 炎症反応のシグナル伝達
乾癬は、炎症反応という生体防御機能の一部が過剰に働くことで発症すると考えられています。
「炎症反応を起こせ」という命令には、「細胞同士の命令のやり取り」と「細胞内での核への命令伝達」があります。
乾癬の発症において、「細胞→細胞」間での炎症反応促進命令を伝えるのに特に重要なシグナル伝達物質が、IL-12(インターロイキン-12)とIL-23(インターロイキン-23)です。
IL-12とIL-23が、ヘルパーT細胞の表面に存在する受容体に結合すると、今度は細胞内で炎症反応促進のシグナル伝達が行われます。
これは、細胞内部で受容体に隣接しているTYK2(ティック ツー、Tyrosine kinase 2、チロシン キナーゼ2またはタイロシン キナーゼ2。JAK(ヤヌスキナーゼ)の一種)という酵素の活性化がきっけかとなり開始されます。TYK2の活性化は最終的に細胞核へ伝わり、遺伝子の発現が炎症反応を促進する方向へシフトチェンジします。すると今度は自らが、他の細胞へ「炎症反応を起こせ」と命令するようになります。
このような流れで起こされた炎症反応が過剰になることで、乾癬が発症すると考えられています。

IL-12、IL-23、TYK2が媒介する炎症反応のシグナル伝達
IL-12、IL-23は細胞間のシグナル伝達に、TYK2は細胞内でのシグナル伝達に関与します。
デュークラバシチニブの効果メカニズム(作用機序)
デュークラバシチニブはTYK2に結合する薬で、IL-12およびIL-23受容体によってTYK2が活性化されるのを防ぐ働きがあります。IL-12やIL-23を受容体が受け取ってもTYK2が活性化されることがないので、細胞核へ「炎症反応を起こせ」という命令が伝わりません。細胞外からの「炎症反応を起こせ」という命令が受容体でストップし、細胞内および細胞核へは伝達されなくなりますので、関連する細胞の炎症反応が抑えられ、乾癬の症状が緩和すると考えられます。

サイトカイン結合によるJAK(ヤヌス キナーゼ)の活性化
細胞膜上に存在する受容体にサイトカインが結合すると、細胞の内側で受容体と結合していたJAKの活性化が起きます。
もっと知りたい
IL-12、IL-23を受け取り炎症反応促進へと舵を切ったヘルパーT細胞は、Th1細胞 (1型ヘルパーT細胞)、Th17細胞 (17型ヘルパーT細胞)、Th22細胞 (22型ヘルパーT細胞)という別の種類の細胞へ分化します。これらの細胞は、表皮角化細胞に直接「炎症反応を起こせ」と働きかけます。このようにして、表皮角化細胞や免疫細胞が炎症反応を過剰に行うことで、乾癬が発症すると考えられています。なかでも、乾癬の発症に特に重要なのがTh17細胞であることが近年分かってきました。本治療薬によって、Th17細胞およびTh1細胞への分化が抑えられることで、乾癬の症状が緩和されることが期待されます。

乾癬発症に関与する炎症反応の細胞間シグナル伝達(更新中)
乾癬の発症には、さまざまな種類の細胞、シグナル伝達物質、それらを受け取る受容体などが、複雑に関与しています。
基本情報
どうやって使用するの?
経口薬(飲み薬、内服薬)で、剤形は錠剤です。
どんな時に使用されるの?
既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症が、適応疾患となります。
どこで出してもらえる?
処方箋(しょほうせん)医薬品となりますので、医師による診断と処方箋が必要になります。ドラッグストアなどで直接購入することはできません。
乾癬治療における JAK 阻害剤の使用は、日本皮膚科学会が生物学的製剤と同様に承認施設に限定した例があります。本剤についての情報は、かかりつけの先生に相談してみてください。
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/about/Upadacitinib_guid.pdf