セクキヌマブ(製剤名:コセンティクス)Secukinumab(Cosentyx)

セクキヌマブ(製剤名:コセンティクス)は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬に使用される生物学的製剤(バイオ医薬品)で、剤形は注射剤(皮下注射)となります。2021年9月の改定により、小児への適応も可能となりました。
炎症反応を促進するシグナル伝達物質 IL-17Aの働きを阻害することで、乾癬の症状を改善すると考えられています。
日本皮膚科学会に承認された医療施設で処方してもらうことができます。
前提のメカニズム
乾癬の発症には、生体防御を目的とする免疫機能の中の、炎症反応が深く関わっています。
炎症反応の際、司令塔となる細胞は、サイトカインという化学物質を分泌して、周りの細胞に「炎症を起こせ」と命令をくだします。乾癬の発症に重要なサイトカインの一つにIL-17Aがあります。 IL-17Aは、近年発見されたTh17細胞というT細胞の一種によって分泌されます。
それぞれについての詳細は以下のページをご覧ください。
セクキヌマブの効果メカニズム(作用機序)
セクキヌマブ(Secukinumab)は、IL-17Aと特異的に結合するよう作られた抗体を有効成分とする薬です。
抗体は、免疫系の細胞が産生する「ミサイルや矢」のような役割をする大きな分子で、抗原(標的)に結合しその働きを阻害したり、破壊するのを手伝います。
セクキヌマブは、IL-17Aに結合し、IL-17AとIL-17A 受容体の結合を阻害することで、炎症反応促進の命令が伝わるのを防ぐ働きをします。

セクキヌマブによるIL-17Aの阻害
セクキヌマブはIL-17Aに結合しその働きを抑制する阻害薬である。セクキヌマブの働きにより、細胞核への炎症反応促進性のシグナル伝達が抑制される。
乾癬発症箇所の近傍では、炎症反応促進の命令を受けヘルパーT細胞から分化した17Th細胞が、IL-17Aを分泌しています。IL-17Aによって炎症反応促進へ舵を切った表皮角化細胞や免疫系細胞は、自身もまた、同様の命令を周りにくだし、「炎症を起こせ」という命令があちこちで飛び交っているような状態になっています。ここにセクキヌマブが辿り着くと、セクキヌマブがIL-17Aと結合し、IL-17Aが受容体と結合するのを阻害します。すると、「炎症を起こせ」という命令の伝達がストップすることになります。
このようにして、セクキヌマブは、IL-17Aに結合し炎症反応のシグナル伝達を阻害することで、炎症反応を減少させ、乾癬の症状を緩和していると考えられています。

セクキヌマブはIL-17Aに結合しその働きを阻害する
セクキヌマブはIL-17Aに結合しその働きを抑制する阻害薬である。IL-17Aの受容体への結合が阻害されるため、細胞が炎症反応へ舵を切らず、乾癬の症状が緩和されると考えられる。
セクキヌマブの小児への適応
2021年9月の用法の改定により、小児への適応も可能になりました。
既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬の、6歳以上の小児が対象となります。
小児の乾癬治療に関し、国内で使用を認められている初の生物学的製剤になるとのことです。
添付文書より
通常、6歳以上の小児にはセクキヌマブ(遺伝子組換え)と して、体重50kg未満の患者には1回75mgを、体重50kg以上 の患者には1回150mgを、初回、1週後、2週後、3週後、4週 後に皮下投与し、以降、4週間の間隔で皮下投与する。なお、 体重50kg以上の患者では、状態に応じて1回300mgを投与す ることができる。
これに合わせて、「皮下注 75mg シリンジ」という剤形も追加されました。
以下のページも合わせてご覧ください。
基本情報
どうやって使用するの?
抗体製剤の入った薬液を、皮下に注射します。
どんな時に使用されるの?
既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬が、適応疾患となります。
どこで出してもらえる?
処方箋(しょほうせん)医薬品となりますので、医師による診断と処方箋が必要になります。ドラッグストアなどで直接購入することはできません。
日本皮膚科学会から乾癬生物学的製剤使用承認施設として認めらえた医療施設でのみ、処方してもらうことができます。
公益社団法人日本皮膚科学会 乾癬生物学的製剤使用承認施設
https://www.dermatol.or.jp/modules/biologics/index.php?content_id=4#syounin